名古屋で長年に渡って、常設の蕎麦打ち道場を営み、定期的な蕎麦打ち教室も主催する蕎麦工房紗羅餐として、何か皆さんのお役に立てるようなことはないか・・・という想いから蕎麦打ちお悩み相談Q&Aと題しまして、皆さんから蕎麦打ちのお悩みがないかを募集し、それに対して当ブログにてお答えすることになりました。
早速、ご質問をいただきましたのでご紹介したいと思います。

東京都在住 H・T様より(ご質問 一部抜粋致しました)
「蕎麦打ちは数年やっておりますが、その工程の中でどうしても丸出しが上手く出来ず、時にはハートの様な形となり不満が募るばかりです。延し棒の力の加減とか、麺たいに対する麺棒の動かす範囲とか、その他コツが色々有ると思いますが、どうか良きご指導をお願い致します。」という内容のものです。

ご質問いただき誠にありがとうございます。さて、丸出しに関してきれいな円を作るにはどうしたらよいかというご相談をいただきました。
蕎麦打ち教室にアシスタントとしてついて行くと、同じようなことで悩んでいる生徒さんが実に多いことを思い知らされます。
まずは、丸出しをきれいな丸にすることの意義を再確認しておきます。
①なるべく厚みを均一にすることでそのあとの延しがスムーズになり手数が少なくて済みます。延しの厚みも整えやすくなるし、手数が減れば早く打つことができるので生地が乾燥しにくく、蕎麦にあたえるストレスも減らすことができ、ひいては蕎麦のつながりが良くなることにもつながります。
②正円形に近ければ近いほど、その後、角出し(四つ出し)した際、四角形になりやすい。きれいな四角にしようとする余計な手数が減ることの効果は①と同様です。きれいな四角にすることにより、蕎麦の長さが揃い、ロスを減らすことにつながります。

以上のようなことから、丸出しの際にきれいな丸を作ることがその後の工程でいかに大事かということがわかっていただけたと思います。

それでは、具体的には、どのようなことに注意し、意識すれば上手く丸出しできるのでしょうか。
蕎麦打ちに関してはその前の作業からの連続であり、前の工程も関係してくることが多いので、鉢での作業の最終段階から説明して参ります。
ここは必要ないということでしたら、とばしていただいても構いません。

ブログ形式ということで、主に文章によりお伝えしていかなければなりませんが、できる限りご理解いただきやすいように写真もまじえながらご説明していきます。当HPの蕎麦の打ち方http://teuchi-soba.jp/wp/wp-admin/post.php?post=1248&action=editにおいて、動画もご覧になれますので、併せてご参考ください。
また、前提条件として蕎麦粉400g、中力粉100gの二八蕎麦をご家庭で打つ場合を想定します。
こちらでご紹介するお勧めの打ち方は、あくまで紗羅餐丸の内道場においてクラブ員さんに向けて推奨する打ち方であって、蕎麦打ち職人が現場で打つ打ち方とは違う部分も多くありますので、ご了承ください。

それでは、詳しい説明に入っていきます。
へそ出しした後の円錐形が綺麗なほど、たまにするときにたまが綺麗な丸になっているほどそのあとの地延し(鏡出し)を綺麗な丸にしやすいです。

・へそ出しをしながら、鉢の側面に生地をこすりつけて表面を磨きます。これは、延してく際のひび割れ防止に有効です。

 

 

 

 

 

 

・生地の底の面も鉢の平らな面に対してコロコロと擦り付けて表面を磨きます。そのあと上下を入れかえ同じようにします。これにより形も整います。

 

 

 

 

 

 

・地延し(鏡出し)の前の状態がこちらです。このような形になっていれば問題ありません。麺台での作業に入ります。

 

 

 

 

 

・地延し(鏡出し)に入ります。親指のつけ根を使って、上から下に押し付けるようにします。生地を少しずつ回転させながら行います。直径約25㎝、厚みは1.5㎝位を目標とします。

ポイント◎丸い形と厚みを極力維持することを意識します。あまり形が崩れてきたら横から手を入れて形を補正します。手の平を柔らかく使い、表面にでこぼこができないように注意します。


 

 

 

 

 

・2回転くらいさせたら生地が残っている真ん中も押さえてならしていきます。
地延し(鏡出し)終了後がこちらです。この時点で、ある程度丸になっていれば、延し棒を使って丸出しする際も上手くいきやすいです。

・延し棒を使いだす前に、ひび割れ防止のために右手小指と左手親指のつけ根の部分を使って円周を押さえていきます。左右の手が反対になっても問題ありません。これが形を整えることにもつながります。一周まんべんなく行います。この工程をすることで後に本延しする際に端から生地が大きく破れてくることを防ぐことができます。


・それでは、本題の丸出しに移りましょう。
最初は円の下三分の一くらいのところから、生地の上まで、比較的力強く上から下に押さえつけるようなイメージで麺棒を動かします。
特に最初は手による凹凸が多少残ってしまっているので、それを滑らかにならすイメージで行います。麺棒の上の手は三角形の底辺から頂点に向かって絞り込むようか形で行います。そのまま生地の端までいくと端がつぶれて極端に薄くなってしまうのでその手前で力を抜きます。
生地を20°から30°くらい少しずつ回転させながら行い直径を大きくしていきます。先程同様、ポイントは厚みを均一にすることと丸い形を極端に崩さないように意識することです。一か所で生地を伸ばし過ぎると形が崩れやすいので注意が必要です。


・目標の寸法は直径40㎝くらい、厚み5mmくらいとします。
7割くらいの寸法になるまでは、先程の三角形の頂点に向かう延し棒使いで行います。

途中、形が少し崩れるようなことがあれば、抵抗があるかもしれませんが、延し棒は使わずに横から手を入れて形を修正します。そのままにして放っておくと、形が大きく崩れ修正することが難しくなってしまいます。
質問者様のおっしゃるようにハートの形になってしまうような兆候がでてしまったらその場で補正します。



・7割くらいの寸法になったら、延し棒に入れる力も最初よりも弱くして、使い方も三角形の頂点に向かって絞り込む方法ではなく、円周に沿って円を描くような方法(丸の内道場の講師は「平泳ぎの手のように」と言います)に変えます。回転させながら延します。
目標とする直径、厚みになれば丸出し終了です。角出し(四出し)へと移ります。

 

 

 

 

 

 

以上、丸出しのついてのご返事を終了します。
分かりづらい部分も多々あったと思いますが、少しでもお役に立てれたなら幸いです。
また蕎麦を打ってみた感想をお聞きできれば嬉しく思います